G-ForSE 2004 ラホール(パキスタン)
2004.11.25〜26
G-ForSE 2004: 第1日目 パネルディスカッション
G-ForSE2004では、スポーツと環境について議論する3つのパネルディスカッションが行われました。パキスタン国内外からのゲストが、それぞれの専門に応じて分かれました。それぞれの議題は以下の3つになります。
- 企業の環境責任
- スポーツと環境−そのコンセプト、現実と行動
- 学校、産業界、スポーツ団体、アスリート間における、より良い環境作りの為のパートナーシップ
パネルディスカッション1: 企業の環境責任
世界スポーツ用品工業連盟(WFSGI)のミシェル・ぺロダン理事長は、「持続可能な開発と企業の社会的責任がWFSGIの中心的な関心事である」と述べました。WFSGIの環境問題に対する考えは、連盟メンバーの環境マネジメントシステムISO14001の認証取得への努力を奨励することであり、また環境への悪影響をパキスタンのような国において根源から削減することです。
一方で、国際商業会議所パキスタン支部のタリク・ラングーンワラ代表は、パキスタンのように設備の不足した開発途上国においては、水準の格差を埋めるための新しい手段を探すことが不可欠だと指摘しました。彼は、この問題は極めて重要だと承知してはいるものの、法外なコストがかかることを予測しています。
National Refinery社のマネージングディレクターであるカイザー
ジャマル氏もこの見解を改めて表明し、先進国は産業が成長するにつれ、開発途上国と技術を共有することにより環境責任を果たすことができると呼びかけました。
Responsible Business
Initiative の最高責任者であるアンブレーン ワヒード氏はパキスタンでの成功例として、世界の主要なスポーツ用品生産の中心地の一つであるシアルコットが、前向きに断固として児童就労問題に取り組んだことや、企業の社会的責任に関して高い認識を維持していることを強く指摘しました。
この点は、シアルコットにおける児童就労問題への取り組みの成功は、国内及び国際団体の指針やガイダンスのおかげであり、難題に真っ向から取り組む精神力に帰するものであるとCapital
Sports社のマネージメントディレクターのザカウディン氏のコメントにより痛感させられました。
スポンサー代表のコカ・コーラ社のアミール・パーシャ氏は同社とスポーツの長いつながりや、企業とオリンピックのようなスポーツイベントに付随する積極的な価値―すなわち、信頼や友情、尊敬やベストつくすことなど―とを結びつけたいという願いの要旨をまとめました。企業の社会的責任ということを鑑みて、パーシャ氏は同社のパキスタンでの”adopt-a-school”(学校支援プログラム)のような、地域社会へのより積極的な参加や、America
Recycle 2004 Campaignを含む同社の地球規模の環境保護運動などを指摘しました。
 UNEP「スポーツと環境」特別顧問トーレ・ブレビック氏によると、このようなスポンサー企業は、オリンピックのような大規模なスポーツイベントの中で、環境問題を取り上げるべき役割の一角を担っています。環境問題をオリンピック精神の三つ目の柱として、国際オリンピック委員会はこの問題に、政策、企画及び行動をもって真剣に取り組んでいます。そして、関連するすべての請負業者、スポンサー、主催都市、NPOは、企業の環境責任を甘受しなければなりません。
パネルディスカッション2:スポーツと環境−そのコンセプト、現実と行動
二つ目のパネルディスカッションでは、「スポーツと環境」というコンセプトの背景にある主要理念が取り上げられました。そして、同分野で現在取り組まれている活動内容が紹介されるとともに、将来の活動の可能性について討論されました。
グローバル・スポーツ・アライアンス(GSA)の岡田達雄常任理事は、アスリートに対し、清浄な空気と水の重要性を説き、環境保護の啓発と行動において世界中のスポーツコミュニティーが持っている潜在的な可能性について語りました。岡田常任理事は、ジャンルを問わない国際的なスポーツコミュニティーの統一を目指すエコフラッグムーブメントなどを例として挙げ、環境保護活動の概略について述べました。
Leadership for Environment
and Development(LEAD)のアサッド・サンブル氏から「現時点でNPOや環境局が果たすことの出来る役割は限られている」という指摘があったものの、NPOや環境局は環境保護を促進する上で重要な役割を果たしています。1997年の環境保護法制定にも関わらず、環境保護局はこれらの法律を行使する立場にはないと同時に、そうするように計画されてもいません。こういった機関が果たす役割とは、環境保護に対する意識を促進し、より良い企業市民の育成に努めることのはずです。
WWFパキスタン支部のアリ・ハッサン・ハビブ代表は、環境的にデリケートな海抜1万2千フィートの場所に1万人の観衆が詰めかける、パキスタン北部で毎年開催されているシャンドゥール・ポロ競技会でのWWFの環境保護活動を挙げ、WWFのような組織が発展途上国において行っている取り組みについて紹介しました。WWFは、同競技会を「ごみゼロイベント」とすることを目指すだけでなく、渡り鳥達の中継地点である湖畔への立ち入り限定措置や特定のキャンプサイトの設置、環境保護声明の発表や永久構造建築の建設制限など、生態系の保護を目的とした運動にも着手する予定です。
また今回のパネルディスカッションには、「先進国における環境保護意識・行動を促進する」という同じの役割を果たしつつも、異なった課題に取り組む二つの団体が参加しました。Green
Football Franceディレクターのアレクシス・ギャリース氏は、サッカーシーズンを通して出来るだけ多くのクラブに「スポーツと環境」の考え方について認知してもらうために、同団体がサッカー愛好家およびサッカークラブと共に行っている取り組みを紹介しました。
FIFA 2006サッカー・ワールドカップ主催者の一員であるOeko
Instituteのハルトムート・シュタール氏は、「この世界で二番目に大きなスポーツイベントに環境保護原理を適用する」という課題に挑んでいます。この取り組みがチャレンジと称される所以は、オリンピックとは違い、サッカー・ワールドカップは一つの都市が会場となるのではなく、開催国であるドイツ全土が会場となる為です。また近年のオリンピックに共通する、廃棄物、水、エネルギーに関する問題に取り組む一方、交通手段が環境におよぼす悪影響は、独創的な挑戦を生み出しています。”Green
Goal”と題されたイニシアチブでは、カーボンニュートラルな状態を保つために、世界中で気候変化を阻止することを目的としたプロジェクトに投資を行っています。
パネルディスカッション3:学校、産業界、スポーツ団体、アスリート間における、より良い環境作りの為のパートナーシップ
学校、スポーツ団体、スポーツ産業、アスリートがスポーツを通じた環境保護意識・環境保護活動の促進を行う上で重要なお互いのパートナーシップについて話し合われました。
2012年マドリッド五輪招致委員会・環境ディレクターのアントニオ・ルシオ氏は、自身のプレゼンテーションの主題としてパートナーシップの重要性を説きました。マドリッド市民の理解とコンセンサスを得ることこそが、同氏率いるチームの取り組みの焦点だったのです。その結果、マドリッド市民の大半の環境保護意識を向上させただけでなく、オリンピック招致に対する支持率が90%を上回ったことで、マドリッド市の五輪招致を実現へと近付けたのです。
Adventure
Foundation パキスタン支部のアフタブ・ラナ事務局長によれば、同団体は地域コミュニティーとのパートナーシップ構築に大変な努力をしてきました。その結果として、地域社会内で環境保護の促進を成功させ、アドベンチャースポーツ(パキスタンではまだ珍しい)の人気向上をもたらしました。更に、清掃活動や植樹活動、ガイドやインストラクターの育成などに参加するボランティアを確立するまでに至りました。
世界スポーツ用品工業連盟(WFSGI)のような団体は、世界中の他の団体とパートナーシップを結んでいます。WFSGIのアンドレ・ゴルジュマン事務局長は、「中国のような産業国として急速に発展する国に対して環境保護規範を適用するには、幾多もの壁を乗り越えなくてはならない」としています。同連盟は、環境保護の施行機関ではなく、産業界に対して環境保護の推奨活動をしている機関であり、加盟団体により良い環境保護活動をするよう働きかけています。
スポーツパーソナリティーであり、クリケットのコメンテーターとしても活躍するラミーズ・ラジャ氏は、プロアスリートとスポーツ界のスター達が環境保護促進の模範となることについて述べました。一部の有名クリケット選手達がAIDSやその他の健康に纏わるキャンペーンに関わっているとはいえ、この分野は明らかに未発展です。ラジャ氏は、「おそらくプロアスリート間での環境保護意識も未だ十分とはいえない」とし、「青少年、企業そして社会の注目を得ることで、模範としての協力を仰ぐことが必要だ」としています。
尚、今回のパネルディスカッションでは、共同プロジェクトの成功例として二つのプロジェクトが紹介されました。
Emirates
Diving Association代表のであるイブラヒム・アル・ズビ氏は、同団体が提携する国連環境企画(UNEP)およびドバイの国際的ボランティア達の”クリーンアップ・アラビア”や”Turtles
Tagging”といった海洋保護プログラム参加を支援した米環境NGO・Ocean Conservancyとのパートナーシップについて概略を述べました。
『ケニヤ・スポーツ・ネイチャー・キャンプス』のディレクターを務めるリズ・オデラ博士は、UNEPやグローバル・スポーツ・アライアンス(GSA)といった組織との連携を図ることで、ナイロビ近郊のランガタ地区や隣接するキベラ・スラム地域の6,400人の子供達にスポーツ指導や環境清掃運動、植樹活動や環境関連教育を実施しています。
パキスタンの有名な登山家、ナズィール・サビール氏は、人間と自然との相互関係を通じてスポーツがもたらすことのできる素晴らしい経験と、地球上の貴重な資源を保護することの価値について語り、これら全ての環境団体の願いを込めて最後を締めくくりました。
「精神的、内面的な幸福は自然と繋がっている。最も大きな問題は人々の心が汚染されることだ。」
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